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現代西洋医学(特に発生学・解剖学)と東洋医学(鍼灸)が、**「ファッシア(筋膜などの結合組織)」**という共通言語を通じて統合できると主張するものです。一見異なる両医学が、実は同じ生命現象を異なる視点から説明していることを論じています。
本書の核心
- 目的: 東西医学の間に存在する長年のギャップを埋めること。
- 結論: 鍼灸の「経絡(氣の通り道)」の正体は、全身を覆うファッシアのネットワークであり、「ツボ(経穴)」は、身体が作られる過程での**発生学的な司令塔(形成中心)**である。
主な論点
1. 「氣」の正体は生命電気である
サンショウウオの再生能力の研究から、生命活動や再生には微弱な直流電流が不可欠であることが示されます。この身体を流れる**「生命電気」こそが、東洋医学でいう「氣(き)」**の本質であると提唱しています。ファッシアの主成分であるコラーゲンは、圧力がかかると電気を発生させる性質(圧電性)を持ち、全身に電気的なネットワークを形成しています。
2. 身体の構造と鍼灸理論の一致
- 経絡とファッシア: 氣の通り道である「経絡」は、解剖学的には全身の臓器や筋肉を繋ぐファッシアの層の隙間(ファッシア面)と一致します。外科医が手術の際に目印として利用するこの面は、エネルギーが最も流れやすいルートです。
- ツボと発生学: 鍼治療で用いる「ツボ」は、身体の関節や構造が大きく変化する場所に集中しています。これらの位置は、胎児が成長する過程で細胞の分化を指示した「形成中心」と完全に一致しており、成人後も身体の維持機能を持つ重要な結節点となっています。
3. 東洋医学の概念を現代科学で再解釈
本書の後半では、陰陽五行説に基づく各経絡(心経、肝経、腎経など)が、単なる抽象的な概念ではなく、具体的な解剖学的・発生学的な構造に基づいていることを解説しています。
- 督脈(とくみゃく): 背骨に沿ったこの経絡は、脳や脊髄が作られる際の「神経管」が閉じたラインと一致する。
- 任脈(にんみゃく): 体の前面中心線は、消化器系の元となる「卵黄」が体に取り込まれた際の「つなぎ目」と一致する。
- 少陽経(しょうようけい): 従来、解釈が難しかったこの経絡は、脂肪の代謝と輸送を担う**「リンパ系」**と深く関連している。
総括
この文章は、これまで西洋医学で軽視されがちだった「ファッシア」という組織を鍵として、鍼灸のメカニズムを科学的に解明しようとする画期的な試みです。東洋医学の古代の知恵が、現代の発生学や生物物理学によって裏付けられつつあることを示し、両医学の統合による新しい医療の可能性を提示しています。