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この本は、鍼灸や中医学で語られる**「氣(き)」や「経絡(けいらく)」**といった概念を、現代の科学(特に解剖学や発生学)の視点から説明しようとするものです。西洋医学と東洋医学の間の「ミッシングリンク」を埋めることを目指しています。
中心となる理論:「ファッシア」の重要性
本書の中心的なキーワードは**「ファッシア」**です。これは、筋肉、骨、内臓など、身体のあらゆる組織を覆っている膜状の結合組織です。
- 氣の正体とは?
- ファッシアの主成分であるコラーゲンには、力が加わると微弱な電気を発生させる圧電(ピエゾ)効果という性質があります。
- 著者は、この身体中に流れる微弱な直流電流こそが「氣」の正体であると説明しています。これは、サンショウウオなどが体を再生させる時に流れる電流と同じ種類のもので、生命活動の根源的な力と捉えられています。
- 経絡の正体とは?
- 氣が流れる道筋とされる「経絡」は、特定の管として存在するのではなく、全身にネットワークのように張り巡らされたファッシアそのものであると述べています。
- 中医学の「三焦(さんしょう)」という「形はないが働きがある臓器」も、このファッシアによって作られる身体の空間(区画)のことだと説明しています。
なぜこの理論に至ったか
著者は、中国の著名な鍼灸師から「鍼灸は身体の『空間』に作用する」と教わったことをきっかけに、この考えが発生学(生命が誕生し、体が形作られていくプロセス)と深く関連していることに気づきました。
人間の指が(特定の条件下で)再生する能力や、動物の再生メカニズムの研究からヒントを得て、生命の発生・成長・再生を司る根源的な力が「氣」であり、その通り道が「ファッシア」であるという結論に至りました。
要するに、この本は**「鍼灸がなぜ効くのか?」という長年の謎を、「ファッシア」という組織が生み出す「電気」という現代科学の言葉で解き明かそうとする画期的な試み**を紹介するものです。